「……」
…私は何で
こんな心配まで
しなきゃいけないんだろう。
全てのヒトに
わかって貰おうとも
言い訳しようとも
思わないけれど
ただ、腹立たしかった。
カンケイないでしょと
怒鳴ってやりたかった。
でも
そんな度胸もない
ちっぽけな自分だった。
汚れた手。
何度石鹸をつけても
落とせない。
こすっても
こすっても
キレイにならない…。
どうして
こうなっちゃうんだろう。
私は…。
「そんなにゴシゴシ
こすったら
皮がむけちゃうよ」
ジュンジュンが私の手を
冷たい水の中から引き出して
「もう汚れてないから」
自分のハンカチで
私の手を包んだ。
「…本当に
もう汚れてない?」
「うん。
ちいさい頃から知っている
変わらないヒメの手だ」
ジュンジュンの手が
コトバが
あたたかかった。
「授業、あと1時限
残ってるけど
パスしちゃわない?」
ジュンジュンが提案する。
ここで帰ってしまったら
もう二度と
学校に戻れなくなるような
気がしたけれど
窓からこっちを窺っている
クラスメイトを見ていたら
もうどうでも
よくなってしまっていた。