不意打ちのような
『彼』の質問に
私は
ココロを乱される。
「おまえのオトコは
おまえを泣かせたり
していないか?」
『彼』が
たたみかけてくる。
「ジュンニイは
オトナだもん」
泣かされたコトなんて
一度もなかった。
「大事にして貰ってるのか?」
「うん」
大事にして貰ってきたよ。
何よりも、誰よりも
大切に
大切に…。
「だから…」
ジュンニイとの
想い出が湧いてきて
ふいに
涙が溢れてくる。
「ウソつき」
全て知ってると
『彼』は言った。
ジュンジュンは
おしゃべりだ…。
静かに雨音だけが
部屋に響き続けた。
「泣いてるオンナを
泣きやませる方法なら
ひとつだけ知ってるけど」
こんなジョークを
言えるくらい
オトナになってたんだね。
ちょっと
笑ってしまった。
「…バカじゃないの…」
「うん」
「あなたに
出来るコトなんてないから」
『彼』を
突き放したつもりだった。
すがるワケには
いかないヒトだ。
それが
ジュンニイに対する
私の誠実でもあった。
なのに。
「もう全てのヒメゴトから
おまえを解放させたい」
そう言って電話を切った
『彼』の真意を
『彼』の最大級の
誠意と愛情と行動力を
このときの私は
まだ知る由もなかった。