ジュンジュンが
後をついてくる。
『彼』からの電話の内容が
気になってるんだろうか。
でも、今の私には
そんな気遣いをする
余裕なんてなかった。
「あの後さ。
アニキと話したんだ」
ジュンジュンが
話しかけてくる。
「私からもちゃんと
事情を説明しといたから。
アニキともう一回
話してみてくれないかな」
事情って…。
何をどういう風に
どこまで話したって
言うんだ。
だいたい
妹に説得されて
心変わりできるような
ジュンニイなら
あんな風な別れ方は
なかった。
一晩で許せるくらいなら
私の話を
ちゃんと聞いててくれてたよ。
あの誠実で
忍耐強いジュンニイが
許してくれようと
しなかったんだ。
「もう、今更
どうにかなるなんて
期待なんか出来ないよ」
「そっか、そうだよね」
ジュンジュンの
つぶやきが
昨夜のその後の
ジュンニイの頑なさを
物語っていた。
「あのさ」
私の不機嫌さに
かまわず
ジュンジュンは
さらに話しかけてくる。
「今朝、ニューヨークでの
オークションの結果が出て」
「……」
ジュンジュンの声のトーンで
いい知らせじゃないって
すぐに察しはついた。
「最高額。
『彼』の1号あたりの
絵の相場が
5倍になったんだって」