離れたくない


どうしてミスターが
私に電話なんか
してきたりしてるのだろう。

ミスターの日本語も
私の英語も
完璧ブロークンだ。

細かいニュアンスを
声だけで伝えるのは
無理に決まっている。


誰か通訳が傍にいての
電話なんだろうか。


でも、そこまでして
何の為に?


ミスターが自ら話さないと
いけないような
大事な話だとでも
言うのだろうか。


『彼』のコト
…だよね。


でも
そんな重要な話なんて
思い当たる節が全くない。

アタマの中を
答えの出せない問題が
ぐるぐる回る。

それにしても
何でジュンニイと
ずっと話し込んで
いるんだろう。


流暢な英語。

しかも
かなりの早口で。

単語の切れ目が
わからない。

知ってる表現がない。


日常会話程度の
レベルだとばかり
思い込んでいた
ジュンニイの英語。


いつも私の前で
英語を話すときは

私にもわかるように
しゃべっていて
くれてたんだ。

さりげない気配り。

とっても
ジュンニイらしい。


でも
そのジュンニイが

私が聞き取れないような
英語を使っている
というコトは

私には
聞かれたくない話だと
いうコトで。


会話に
「She」や「Her」
という単語が
たくさん出てきて

それが
私を指しているのは
想像に難くなかった。


私には聞かれたくない
私の話。

疑心暗鬼にかられる
自分がいた。