ジュンニイは
私の方をときどき見ては
目を伏せている。


楽しい話じゃないのは
ジュンニイの表情からも
簡単に読み取れた。


ジュンニイが
吐き捨てるように
相手を責めるように
何か訴えていて

ワケのわからない不安に
押し殺されそうになる。


気がつくと

涙でぐちゃぐちゃの顔を
私はソファーに
押しつけるようにして

ちいさく
丸くなっている。


いつのまにか
ジュンニイは
電話を終えていて

ケータイが無造作に

テーブルの上に
放り出されていた。


長い沈黙は
いったい何を
意味するんだろうか。


私の座っていた
ソファーが深く沈む。

大好きなヒトの香り。

ジュンニイの気配がする。


そのおおきな
やさしい手は

私の髪を
ゆっくり撫で出した。


「『彼』の今度の個展で

ヒメの絵を展示したいから
許可が欲しいってさ」


ジュンニイのコトバに
思わず顔を上げる。



「なんて顔してんの?」

ジュンニイが笑った。


涙とソファーの跡形で
ぐちゃぐちゃに
なっていた顔に

ジュンニイはその手で

今度は少し乱暴に
触れてくる。


「私の絵?」

絵なんて知らない。


「それからあの彫刻も」


ありえない…!!!!!