「ケンカしたんだってね」


思わず
マユコさんの顔を見る。


「ここ最近は
ず〜っと落ち込んでてね」


事務所のスタッフ
みんなが心配して

毎日のように
この部屋にみんなで
泊まりにきていたという。


「あ〜んまり部屋が
オトコ臭くなったから

事務所のみんなを借り出して
昨日、大掃除よ」


おかげで腰が痛くってと
マユコさんが笑った。


「お酒、飲めないヤツは
こういうときツライからね〜」



「もしかして
俺の話してます?」


ジュンニイが後ろから
ガンを飛ばしている。


「当たり前でしょ!

いっぱい言いつけて
やったわよ!」


マユコさんが
ケラケラと笑い飛ばした。

私はゴミを
ふたりはキャリーバックを
それぞれ持って

エレベーターに乗った。


狭くなった
エレベーターで

今度は自然に
ジュンニイの横に
くっつくコトが出来た。


「空港まで
送っていってもいい?」

素直に言ってみた。


「いっしょに
フランスに行く?」


思わぬお誘いに
思考回路が止まる。


ジュンニイが
私のリアクションを
待っていた。


「あ…」

行きたい…!

でもパスポートとか
持ってない。

現実がアタマをよぎる。


「…な〜んて。
言ってみただけ」


私の返事を待ち切れず

ジュンニイは
結論を出してしまった。