「遅いっスよ〜」
マンションの前に
止まっていた
ワゴンの中から
若いオトコのヒトが
声をかけてきた。
事務所の一番下っ端の
デザイナー見習いだと
紹介される。
私より4つ年上。
パンク少年のような
身なりが
社会性を疑わせた。
私よりほんのちょっと
背が高いのかな。
そのごっつい
ハードなブーツが
身長を推測させるのを
阻んでいる。
「あ、靴の泥
よくとってから
車乗ってくださいっスね〜」
「……」
思わぬ神経質な要求に
眉間にシワが寄ってしまった。
「クルマ命なのよね〜」
マユコさんが
苦笑いしている。
「おまえ
たいがいにしろよ〜」
ジュンニイが
新入りくんのアタマを
笑いながら小突いた。
「新車なんスから〜」
このダレたしゃべり方。
ジュンニイの事務所って
本当に大丈夫なんだろうか。
私を選ぶような
ジュンニイだから
やっぱりどこか
マニアックなのかも
しれない。
…なんて。
自分で考えといて
ちょっと哀しくなった。
新入りくんは
ジュンニイ達の荷物を
トランクに積み終わると
運転席から
好奇心まる出しで
私に話しかけてきた。
「ヒメちゃんって
あのウワサの
ヒメちゃんっスよね」
ウワサ?
隣りに座っていた
ジュンニイの顔を
思わず見た。
ジュンニイの顔が
心なしか引きつって見える。
「でも、よかった〜!
仲直りしたんスね。
これで悪夢から
解放されるってもんっスよ」
新入りくんは
ジュンニイ達の荷物を
トランクに積み終わると
運転席から
好奇心まる出しで
私に話しかけてきた。