「ヒメちゃんって
あのウワサの
ヒメちゃんっスよね」


ウワサ?

隣りに座っていた
ジュンニイの顔を
思わず見た。


ジュンニイの顔が
心なしか引きつって見える。


「でも、よかった〜!

仲直りしたんスね。

これで悪夢から
解放されるってもんっスよ」

新入りくんが
ジュンニイに後部座席から
思いっきり
アタマを殴られる。


「…ったく!

ジュンってば

どれだけ周りが
失恋オトコに迷惑して
気を遣ってきたか

ホンット
自覚してんのかしらね〜」


助手席に座っていた
マユコさんが
新入りくんの援護射撃をする。


「マジ迷惑だったっスよ!

合コン計画しろって言うから

気晴らしになるんならって
こっちも気合い入れて
セッティングしたら…」


合コン…?

私が大変な思いを
していたときに?


何だか
凄くショックだった。


「オンナノコ達相手に

ヒメならどうだとか
ヒメはこうだとか。

何でもヒメちゃんで
例えちゃってね〜。

もうオンナノコ達
呆れるワ
機嫌悪くなるワで

もう被害
甚大っスよ!」


「最後の方なんか
もう5分でいいから
名前を出すのをやめてって

オンナノコ達に
懇願されてたって
聞いたわよ〜」


マユコさんが補足する。

「そうなんっスよ!!

あそこまでくると
一種のノロケだよね〜って」


え。

「充分ノロケ、でしょ」

マユコさんが私を見た。


私は隣りにいる
ジュンニイの顔を覗き見る。


また新入りくんが
ジュンニイに殴られた。


「何っスか〜。

俺ばっかし〜」

「しっかり前見て運転しろ」


ジュンニイが
私のアタマを抱え込んで

自分のヒザの上に
突っ伏させる。