「左肩を下にして
横になってたら
吐きもどしたりしないから」
そう言って
自分のヒザの上にあった
ダウンを
私の顔を隠すように
かぶせた。
「運転へったくそすぎて
車酔いさせちゃい
そうだからな」
「そりゃ、ないっスよ〜」
「ダッコする理由が
欲しいだけじゃないの〜」
マユコさんの
ケラケラ笑いが
車中に響きわたる。
ジュンニイが慌てて
私の耳を押さえたけれど
ちゃんと聞こえたよ。
ジュンニイのヒザ枕。
ダウンジャケットの中
ジュンニイがそっと
私の髪を撫でている。
自分が仔猫にでも
なったような
錯覚を覚えた。
ときどき
その指が頬やアゴ
そして唇に触れる。
そっと
その手を捕まえて
私の頬の上に
拘束してみた。
自由のきく
ジュンニイの小指が
私の気持ちを探るように
遠慮がちに
私の唇にイタズラしてくる。
私はその指先を
唇と舌で
軽くついばんで
それに
応えるかのように
ジュンニイの親指が
私の耳たぶを撫でた。
ジュンニイの体温を
直に感じながら
自分自身も
昂揚していくのがわかる。
スリリングな
ボディランゲージ。
息をひそめて
ジュンニイの指先に
集中した。
「ヒメちゃん
おとなしいけど
具合悪いんじゃないの?」
マユコさんの声に
ジュンニイの指が止まった。
「ああ、眠ったみたい」
ジュンニイが
何事もなかったかのように
平然と答えてる。