「ちゃんと家まで
送り届けるんだぞ。

いいな!」

ジュンニイが
新入りくんの
胸ぐらを掴んで

威嚇して


「ヒトにモノを頼む
態度じゃないでしょ」

マユコさんに
突っ込まれて

「う…」

ジュンニイは
新入りくんのコートから
手を離す。


「…頼む、な」
「…はいっス」

「ホンットに
頼んだからな!」

「目が恐いっスよ〜」


「じゃ」

そうひと言残しただけで

ジュンニイはマユコさんと
ゲートの中に消えていった。


キスも抱擁もなく。

いつもならこの辺りで
用事にかこつけて
引き返してくる
ジュンニイだったのに。


元の鞘に戻ったように
見えていても

確かに以前とは
どこか違っていた。


「ヒメちゃ〜ん!」


私を呼ぶ声に顔をあげる。

「コレ! 返しとく」

そう言って
マユコさんが合鍵を
放り投げてきた。


どうして?


どうして
マユコさんなんだ。


「留守番、よろしくね!」


そのセリフは
ジュンニイから
聞きたかったよ。


マユコさんは
空港のヒトに促され

再びゲートの中に
消えていった。

ジュンニイは結局
再び姿を
見せるコトはなく…。


もう前のふたりには
戻れないのかな。

歯がゆさに
手が震える。


「大丈夫っスか?」

新入りくんが
話しかけてきた。


「だって、泣いてるから」

「あ…」

何だか私
この何ヵ月かで

すっかり
泣き虫に
なってしまっている。