「ま、前見て
運転してください…!」


「おお。

こすんなかったなんて
俺ってラッキーな男!!」


…アタマがクラクラする。

ヤバイ。
何かリバースしそう。


「勘弁して
くださいっスよ〜!!
新車なんっスから〜!!」


自分の口を
死ぬ気で押さえた。


車が適当なトコロで
停まってくれた頃には

耳から吐き出さんばかりの
限界ギリギリの状態で


リバース、した。


久し振りだった。

最近はバスに乗っても
酔ったりしなかったのに。


運転にも
上手下手があるってコト
身にしみて知った。


「大丈夫っスかあ〜?」

新入りくんの声が
遠く車の方から
聞こえてくる。

どうやら、こういうの
苦手なヒトみたいだ。


吐きもどした植え込みに
土をかけてならす。


口の中が気持ち悪い。

ハンカチで手を簡単に拭いて
車に戻った。

「あ〜!そんな手で
車、触んないで
くださいっス〜」


新入りくんが
空港の喫茶のマークが
印字された
大量の紙おてふきを
差し出してくる。


「…あ、ども…です」

このヒトはこんなモノ
いつの間に持って帰って
きていたのか。


セコい…。
セコすぎる…。


思わず爆笑してしまった。