「不世出の大傑作を

一個人の感情で
世に出るのを止めるのは

ナンセンスだと言われたよ」


ジュンニイは私を
力いっぱい抱きしめて


「彼女は君だけしか
見ていないから

自信を持て…とも」


そう言って
私の背中に顔を埋めた。


「自信なんか持てないよ」


私の肩ごしから
伸びているジュンニイの腕。

どこか頼りなくて。


それは…

「愛されてる自信?

それとも
愛している自信?」


自分勝手な
私のセリフだったと思う。


でも
もう今の私には

愛するヒトを
気遣う余裕なんて

カケラもなくて


「…いいよ」

何だか疲れた。


「もう何だっていいよ」


思考回路も
止まってしまう。


なのに

「ジュンニイが
愛してるんなら
それで充分じゃない。

何が不満なの…!?」


なんて

コトバだけは
どこまでも暴走していった。


「ジュンニイは
自分が注いだ愛情に

見返りを求めずには
いられないのッ!?」


気がつくと
私は大声を上げて

泣きながら

手にしたクッションで
力いっぱいジュンニイを
殴っていて。


完全な逆ギレだった。