「どこがじゃ」
書類を抱えたジュンニイが
ツッコミを入れている。
「うるさいわね〜。
早く用意しなさいよ!
飛行機飛んでっちゃうわよ」
「悪い! マユコさん
俺のケースの中に
洋服とか詰めて貰える?」
「詰めて頂けますでしょうか
でしょ?」
そのヒトは
何の迷いもなく
引き出しの中から
洋服を出してきた。
どこに何が入っているのか
全部知っているなんて
掃除も歯ブラシも
みんなこのヒトなんだと
直感した。
「ヒメちゃんも
手伝ってくれる?」
「あ、はい…」
旅慣れていると
思われるそのヒトの
手際の良さに
見とれてしまう。
私の手など
借りる必要なんかないのに。
ジュンニイが私ではなく
このヒトに荷造りを頼んだのは
ただ単に技術の差で
けっして
深い意味がないコトを
祈った。
「下着は3組でいいわ」
彼女に言われて
ジュンニイの
下着を取ってくる。
「黒なんかダメダメ!
白かグレーの
持ってきなさい。
それからマーカーも!」
マーカー?
まさか
修学旅行じゃあるまいし
名前でも書くんだろうか。
恐る恐るマーカーを
差し出した。