「ヒメちゃん。
ここに今から言う通りに
書きなさい」


私のコトを当然のように
ヒメちゃんと呼んでいる
そのヒトは

ジュンニイの
下着の正面を指さしていて。

「ほら! 早く!!」

迫力に押されて
言われた通りに
書いてはみたけれど。


フランス語?

「旅の安全を祈願する
おまじないか
何かなんですか?」


「そう、おまじない!」

変わった習慣もあるモノだと
思いつつ

残りの2枚にも
同じコトバを
同じ場所に書く。


「ただし浮気防止のね!」


持っていたマーカーを
思わず取り落としてしまった。


浮気…防止って。


浮気をする
ジュンニイの姿が

アタマの中でぐるぐる回る。


まさか
まさか…ね。


「来るモノ拒まずで…」

嫉妬と不安で

自分でも
顔が紅潮していくのが
わかった。

このヒトは
私を子どもだと思って

からかって
いるのだろうか。


やっぱりこのヒトは

ジュンニイの…。


「私もダンナが出張のとき

ハメをはずさないようにって
いつも子ども達と書いてるの」


え?

ダンナ?


子ども達!!!????


「結婚してるんですかッ!?」

思わず叫んでしまう。


「やだ。
こう見えても三児の母よ」

あ…。


「売れ残りの
オールドミスにでも見えた?」

「あ、いえ…」

ジュンニイとは
特別なカンケイじゃ
なかったのか…。


胸を撫でおろした。