正義の味方
新入りくんに頼みこんで
ユッキのマンションの
近くの神社の門前で
降ろして貰った。
「ホントに大丈夫っスか?」
「時間には
正確な友達だから。
じきに来ると思います」
「車の中で
待ってればいいのに」
新入りくんが
異様に心配している。
私だって
ひとりは心細かったけど
ユッキの知らないオトコと
ふたりっきりなんて。
そんなトコを目撃されたら
また言い訳から
始めなきゃいけなくなる。
拝み倒して
何とか新入りくんには
お帰り願った。
辺りはもう真っ暗で。
門前町は昼間とは
まるっきり顔が違う。
商店は皆シャッターを
閉めていて
どこも他人顔だった。
ユッキの塾が終わって
帰ってくるのは
だいたい11時すぎ。
ユッキとメールをひんぱんに
やり取りするのもいつも
この時間帯だった。
まだ少し時間がある。
「寒ッ…」
ただ立っているのは
ちょっと辛くなる風だった。
神社の鈴が
鳴らされている音が
聞こえてくる。
受験生の家族らしいヒトが
神社を出入りしていて。
合格祈願で
ちょっと有名だって
新入りくんも
言っていたもんなあ。
「ユッキの合格祈願
して行こうかな」
門の中を覗くと
むこうから
老夫婦が仲良く歩いてくる。
こんな遅くに
何のお願いを
してきたのだろう。
お孫さんの
合格祈願なのかな。
私もジュンニイと
年老いても
あんな風に仲良く連れだって
歩きたいな。