「じゃ、みなさん。

ここで待ってて
くださいッスね。

車、回して来ますっから」


傷だらけの新入りくんが
気を遣ってくれる。

「ねえ。

あのオトコのしゃべり方
何とかなんないの?」


ユッキのひと言に
ジュンジュンと私は
大ウケだ。


「ぐあああぁあぁあ〜!!」

闇夜にツンざく悲鳴。


「何? 今の」
「新入りくん!?」

3人顔を見合わせる。


奇声の元に
駆けつけると

新入りくんが
放心していた。

「駐禁とられた…」

「たかがそんなコトで
あんな奇声を!?」

と喉まで出かかった。


けど。
恩人には言えない。


「店の真ん前に
停めたりしてるから
通報されたんじゃないの」

ユッキがクールに
突き放す。


「今月ピンチなのに〜!」


泣きながら

タイヤについた
警察官につけられたらしい
チョークの線を

自分のカットソーで
拭きとっている。


その姿はどこかコミカルで

悪いと思ったけど
笑ってしまった。


「社会人のくせに
そんな蓄えもないのかー!」

ユッキが呆れてる。

「しかたないわね〜」


新入りくんは
私達3人に借金をして。


「言っとくけど
踏み倒そうったって
無駄だからね」

書かせた借用書を
ひらひらと

「キッチリ請求させて
貰いますから」

…ユッキは本当に
しっかり者だった。


「アンタの運転
恐そうだから
もう帰っていいよ。

このコらは
ウチのお母さんに
車出して貰うから」


ユッキの冷たいコトバに
見送られて
新入りくんはひとり
車で帰っていった。