「ユッキ!!」
「大丈夫!?」
うろたえる私と
ジュンジュンの姿を見て
教室はヤンヤの大騒ぎだ。
「…ユッキ、やっぱ帰ろう」
「……」
足元に転がっていた
黒板消しを
黒板に戻しながら
「これは計算外だったわ」
ユッキがクールにつぶやいて
「まさか今どき
こんな古典的なイタズラする
幼稚なバカがいるなんてね」
メガネをゆっくり外した
ユッキの目がマジだった。
「ユッキ、もういいよ!
もう帰るから!」
思わずこれから
起こるであろう惨劇を
想像して
私はユッキの腕を掴んで
引っ張った。
「何言ってんの?
ショーはこれからじゃない」
「え…?」
ユッキは私の手を振り払って
ひとり教室の中に
歩みを進める。
「ユッキ…!」
ジュンジュンも
ユッキの迫力に押されて
止めきれずにいる。
教室の端にかたまっていた
女子のグループにむかって
ユッキが
ゆっくりと歩いていった。
その輪の中には
さっき駅で遇った
クラスメイト。
その横には
昨夜ユッキが
リストアップしていたうちの
ひとりが
こっちを見て笑っている。
「何がおかしいのよ?」
ユッキが
嘲笑するそのコの
胸ぐらを掴んで
ガンを飛ばす。
ヤバイ!
ユッキは冷静さを
失ってるんだ!
「ちょっとユッキ!」
ジュンジュンが
慌てて止めに入った。
予想外の出来事に
冷静なユッキの
コンピューターも
ヒートしてしまったのか。