「…だったらあげるわよ」
ユッキが思いっきり
ヒイテいる。
「今、家にキレイなタオルとか
なくて困ってたトコだったんで
助かるっス」
ジュンジュンの笑いが
止まらない。
「まったくもう、呆れる…」
ユッキが
つられ笑いする私に
睨みをきかせる。
「ヒメ!
アンタは笑ってる立場じゃ
ないでしょ!!」
あ…。
「ごめんなさい…」
「だいたいどうして境内に
入ったりしてたのよ。
約束は門前だった
ハズでしょ」
「まあ、まあ、ユッキ」
ジュンジュンが
間に入ってくれる。
「…時間があったから
絵馬でも
奉納しようかと思って…」
「こんな時間に
売ってないでしょ」
「だから、ほら」
私は絵馬の方を指さした。
風にひらひらと揺れている
私のノートの切れ端を見て
「間に合わせにしてもヒドイ」
ジュンジュンが苦笑する。
ユッキが
私の即製絵馬を外して
中身を確認する。
ユッキの合格祈願。
「…こんなバチあたりなの
きっと願い事も
叶えて貰えないよ」
ユッキが溜息をついた。
「そんなあ〜」
もう泣き出したかった。
何かやるコト為すコト
みんな空回りで
伝わらなくて…。
「もっと人生は
計画的に!
効率的に!
効果的に!」
夜空にユッキの声が
高らかにコダマする。
「ユッキ…。
消費者金融の
広告じゃないんだから」
ジュンジュンのツッコミに
新入りくんが大ウケした。
「何? コイツ…」
ユッキが赤面しながら
新入りくんに
睨みをきかせる。