苦悩のバレンタイン


ユッキと別れて
ジュンジュンと
繁華街に出た。

明日はバレンタインデー。


ジュンジュンは

毎年恒例の
オヤジさんとジュンニイへの
チョコ選び。


甘いモノが
苦手なお父さんに
何をチョイスすればいいか

アタマを悩ましている。


そんな季節の大イベントが
アタマから
抜け落ちてたくらい

タイヘンな毎日だった。


「チョコじゃなくて
今年は他のにしたら?」


「ダメ!

バレンタインに
チョコを貰うって事実が
大事なんだから」


私の提案はあっさり
ジュンジュンに却下される。


オトコのヒトは口では
甘いモノが苦手と公言して
迷惑そうにしていても

貰うコト自体は
感激モノなのだと
ジュンジュンが力説する。


そう言えば

ウチのパパも
会社のオンナノコ達から
貰った義理チョコを

「困った、困った」と
迷惑がっていたくせに

去年、会社で
義理チョコが禁止されて

何だか背中が
淋しそうだった。


「どうせ食べないから
お金の無駄とか言いながら

それを横流しする瞬間の
自慢げな顔ったら」


かわいいじゃないの〜って。

ジュンジュンは楽しそうだ。


ジンジャー味はどうだ。
コショウ味はこうだ。

今年のトレンドは
この味だとか。


ふたりでさんざ
試食してまわって。


結局、無難なビターチョコを
それぞれの父親の為に
購入する。


「アニキはね〜。

ケッコー好み
うるさいんだよね」