流れのまま
自然に聞いてみた
つもりだった。
「渡したよ。チョコ」
「え」
「ユッキから貰った
10円チョコ!
ヒメと同じく横流し♪」
そう言って
ふざけてみせる。
「……」
ごめん。笑えないよ。
私のリアクションに
ジュンジュンの瞳は
戸惑いの色を隠せない。
想い出のチョコ。
もう笑って誤魔化せないと
観念したのか
ジュンジュンは
頬をほんのり染めて
「『彼』懐かしいってさ。
10円チョコ。
安っぽい味が
何とも言えないって」
そのときの
『彼』の様子を語り出した。
「なんつーリアクション」
思わず苦笑した。
チョコに込められた気持ちに
気づきもせずに
高級なモノに
囲まれて生活してると
こうなってしまうのか。
ジュンジュンに同情する。
「ちいさい頃
よくお母さんに
買って貰ってたんだって」
…『彼』のお母さん。
あの日以来
消息もわからないまま。
どうしているのか。