「あ、そうだ」
ジュンジュンが
さも今思い出したかのように
話を切り出してきた。
「ミスターから
電話いったんだよね?」
「…あ、うん。まあね」
ジュンジュンは
やっぱり電話のコト
知ってたんだ。
「何か事情がよく
わからないんだけど。
ミスターってばさ。
ヒメじゃなくジュンニイと
話をつけたって言ってるし」
「……」
「あの、さ」
「……」
ジュンジュンを
困らせるつもりは
なかったけど
あのときのコトは
思い出したくもなかった。
「ヒメは嫌だったって
解釈すればいいのかな?」
「…ジュンジュンが
私の立場だったら
イエスと言える?」
意地悪な質問返しだと
自分でも思う。
ジュンジュンは
私の顔をじっと見つめた後
「私はさ。あの彫刻は絶対
世に出すべきモノだと
思うからさ」
ジュンジュンは
自分の考えをはっきり
私に示した。
「……」
「…ごめん」
私の気持ちは痛い程
わかってはいるけれど
それでも
味方にはなれない。
だからごめん
という意味なのだろうけれど
親友と好きなヒトを
秤にかけさせる私も
相当のおバカさんだと思う。
けど
やっぱりちょっと
淋しかった。
「あ、信号が変わっちゃう」
ジュンジュンの手をとって
急いで信号を
渡りきろうと促し
私は話題を
変えたつもりだった。
なのに
「『彼』を
許してあげて欲しい…!」
ジュンジュンは
その場に足を留めたまま
私の顔を
じっと見つめていた。