「ちいさい頃
『彼』は
10円のチョコが大好きで
いつもポケットに
何個か入れてたし」
懐かしそうに
ジュンジュンが語り出す。
「欲張りでさ。
絶対に
チョコを分けたりして
くれなかったんだけど
鶴を折るのに使えって
包み紙だけはくれたの」
ハニかむジュンジュンは
凄くかわいくて
その純情さに
こっちまで
赤面しそうになる。
「傲慢で強引な
俺様キャラだけど
ホントは凄くピュアで
やさしいヤツなんだよ」
ジュンジュンの瞳は
私が目をそらすのを許さない。
「『彼』はヒメのコトを
傷つけようと思って
やってるんじゃないから。
それだけは
信じてあげて欲しい」
苦悶に満ちた
ジュンジュンの表情が
私の頑なさを責める。
「うん」とひと言
返事をすれば
済むコトなのに。
そうすれば
ジュンジュンも
おそらく『彼』も
救われるんだろうって
わかってる。
でも
どうしても言えなかった。
言ってあげられなかった。
信号はなかなか
青にはならない。
ふたりの沈黙を
破るように
ケータイが鳴った。