電波のいいトコロを
探しながら

取り留めのない会話で
繋げる。


「そっちは今何時?」

「朝の7時。今起きたトコ」

時差は8時間。

まさかむこうから先に
こんなにも早く
連絡をくれるなんて
思わなかった。


「実は
オーブントースターの中に
パンを突っこんだままにして
出てきちゃったんだよね。

ちょっと取り出して
処理しておいてくれるかな」


ジュンニイからの
電話の本題。


「うん。わかった」

ちょっと
新婚さんみたいな会話で
くすぐったい。


でも

「合鍵持ってるの
ヒメだけだからさ」は
余計なひと言だ。


鍵を持っていれば

事務所のヒトでも
誰でもいいワケで。


「……」

浮ついてたハートが
急転直下する。


「じゃ」

頼むだけ頼んで
ジュンニイは
早々と電話を切ろうとする。


「あの…!」

「何?」

何でもないんだけど。


もう少し話していたい

…かな。


「明日バレンタインだね」

「あ〜、14日かあ」


「ジュンニイ
チョコ好きだよね」


「こっちは
甘い系の本場だから
気を遣わなくていいよ。

ヒメの分も
食べてきてやるから」


久々のジュンニイの
ジョークにココロが踊った。


「お土産
マカダミアンナッツの
チョコがいいな〜」

「ココはハワイか!」

ジュンニイが
すかさずツッコんでくる。


「ベルギーにも立ち寄るから
そこでオトナなショコラ
買って帰るよ」

ベルギーにも立ち寄る…。


何か凄くカッコいい響きだ。

いいなあ。


「やっぱり
ついて行きたかったなあ」