「週刊誌に
自分の仕事先を書かれて」

興味本位の客が
仕事場に
殺到したのだと言う。


「その週刊誌は
読んでないんですけど」

だいたいの想像はついた。


「金の切れ目が
縁の切れ目で」

仕事を変えたのを
キッカケに

ヒモとも手が
切れたようだった。


「元気そうでよかったです」

本音だった。


お母さんは
ふんわり笑って

「じゃ、まだ
仕事がありますんで」

そう言って
私に背中をむけた。


真面目に
地道に

そして

ひとりになっていた
お母さん。


「あの…!」

何か励ましたいと思ったのに


呼び止めておいて
次のセリフが
思いつかない。


お母さんは
そんな私の手を取って

「コレ、おすそわけ」

それをひとつ私の掌に乗せた。


10円チョコ…。

「バレンタインの後
大安売りしてるの見かけて
大量に買い占めちゃって」


昔からこのチョコに
目がなくてと

お母さんが照れ笑いした。