「帰ろっか」
ジュンジュンに促されて
バス停にむかう。
「あら? ふたりとも
ジュンといっしょに
帰るんじゃないの?」
バス停で並んでいた
マユコさんに
声をかけられる。
ジュンジュンが
マユコさんに
駆け寄っていって
「スミマセン。
アニキってば
またワガママばっかで」
保護者のように
アタマを下げた。
「仕事、キャンセル料とか
かかるんですよね」
心配げなジュンジュンの様子に
マユコさんがちょっと
戸惑っている。
「…その点は
バカ外人側が補償してくれる
契約らしいんだけど」
マユコさんは
溜息をひとつついて
「問題は仕事が終わった
その後なのよね」
自嘲的に笑ってみせた。
注目度の高いこの仕事で
もし失敗でもしたら
今までジュンニイが
培ってきた仕事の
評価も信用もガタ落ちになる。
「世界からすでに
評価されてる作品なんて
プロデュースしたって
何の旨味もないわ」
個展が成功したら
それは
『彼』の作品の力として
当然評価されるワケで。
失敗すれば
その演出が悪かったのだと
ジュンニイが叩かれる。
「あのバカ外人もよ!
ホテルに突然訪ねてきて
ずっとつきまとって
口説き続けるなんて
異常だわよ」
マユコさんの怒りは
収まらない。
「こっちまで
アタマがおかしく
なりそうだったもの!」