ジュンニイが
仕事に集中したいと
言い出したのは
そのせいなのだろうか。
「ふた言めには
時間がない
時間がないって。
こっちの都合も考えず!!」
マユコさんのテンションが
最高潮になった。
「もうまともな作品は
創れないっていう
世間の評価を
少しでも早く
払拭したかったんだと
思います」
ジュンジュンのセリフに
マユコさんが
ちょっと冷静な顔になる。
「だったらなおさら
理解できないわ」
『彼』に将来性があると
わかったら
希少価値のあった絵画が
値崩れして
絵を売る立場にある
ミスター達にも
多大な損害が出る。
「…絵を手放す気が
ないヒトには
値崩れなんて
別に何も関係ないから」
損をするのは
マネーゲームをしている
一部の成金だと
ジュンジュンは言い切った。
「あのヒト画商なんでしょ?」
「画商だけど
『彼』の信奉者でも
あるんです」
ジュンジュンの解釈に
ちょっと驚いた顔をして
「…確かにね。
そんな感じだった」
マユコさんは
また溜息を深くついた。
「『彼』の未発表だという
昔の作品の画像も
少し見せて貰ったわ」
「絵を見たんですか!!!」
ジュンジュンといっしょに
思わず大声を
出してしまった。
「な、何よ。見たわよ?
それがどうかしたの?」
「あ、いえ…」
ジュンジュンと目が合って
どうやらジュンジュンも
同じコトを思ったらしい。
「絵って
コレの絵…ですよね?」
ジュンジュンが
恐る恐る私を指さした。