「全くそんな内輪モメに
何でウチの事務所が
巻き込まれなきゃ
いけないのよ!!」
「…すみません」
思わずジュンジュンと
ふたりいっしょに
アタマを下げていた。
「アンタ達が謝るような
話じゃないでしょ?」
マユコさんは苦笑いして
私達のアタマを
くしゃくしゃにする。
「ふたりに
あたり散らして悪かったわ」
マユコさんはオトナだった。
「私個人もね。
過去に評価されてきた
『彼』らしい作品で
シンプルに個展をやった方が
よっぽど
『彼』の評価に繋がるし
『彼』の為になると思ってる」
なのに
何でわざわざ自分で
火傷しにいくような
バカなマネを…。
マユコさんは
そう言いたげだった。
「ヒメ。私らのバスがきた」
マユコさんに挨拶をして
ふたりバスに乗り込んだ。
バスの中
ジュンジュンとふたり無言で
ちょっと気まずい。
訊きたいコトは
たくさんあったけれど
何だか疲れた。
ジュンニイ…。
こんなワケの
わからないコトに
巻き込まれて
いつになったら
私達は『彼』との過去から
解放されるんだろうか。
せっかくジュンニイが
私の過去を許して
まっすぐに愛して
くれ始めたというのに。
こんなコトになって
また距離ができてしまったり
しないだろうか。
「……」
見えない未来に
泣きたくなった。