「ジュンジュン…!」

こんなトコロで
臨戦態勢に入ったりしたら
また騒ぎになっちゃう。


気持ちは嬉しいけど
ここは抑えて欲しかった。


「あ、ごめん。
やっぱりいいや」

そのコは持っていたモノを
後ろに隠すようにして
後退しようとする。


「何、それ!?」

ジュンジュンが
そのコの手から
隠したモノを奪い取った。


「色紙!?」

かわいいピンクの袋に
入っていたソレは
あまりに意外なモノで。


「『彼』のサインとか
貰えないかなあって」

その要求にわが耳を疑った。


「ちょこちょこっと
絵なんか描いてくれると
嬉しいかなって」

そのコはハニかんでみせる。


「『彼』のサイン!?」

ジュンジュンと思わず
顔を見合わせてしまった。


芸能人じゃないんだぞ。

しかも絵をちょこちょこって。

プロにむかって
あんまりな要求だ。


いや、そんなコトよりも
『彼』は目が見えないのに

サインを貰おうなんて

どこからそんな発想が
出てくるんだ!?


あんなリアルな彫刻が
創れるんだから

当然、字や絵だって
フツウに書けるとでも
思ったのだろうか。


「…悪いけど」

目の前に差し出された色紙を
押し返そうとする私を制して


「貰ってきてあげる」

ジュンジュンがあっさり
色紙を受け取った。


「ちょっとジュンジュン!」

ジュンジュンの
アッケラカンとした様子に

遠巻きで見ていた
クラスメイト達が反応する。


「あ、私もいいかな」

「私も!」

「僕もいい?」


我も我も、と

あっという間に

机の上が
いっぱいになった。