マユコさんはキツい目で
ジュンニイを睨んで
「あれ程反対してたのに。
私が飛行機の中で
仮眠とってる間に
契約書に勝手に
サインしちゃって!」
信じられないと憤慨する。
「最後にはボブが折れて
俺に全権を委ねるという条件を
飲んでくれたから」
「そういう問題じゃ
ないでしょ!」
何か話が見えるようで
見えないんだけど。
「結局、アニキは
『彼』の個展の
空間プロデュースの仕事
引き受けちゃったってコトね」
ジュンジュンが
サラリと言い切った。
「え…」
それって。
「これから事務所に戻って
スケジュール調整しなきゃ。
キャンセルしなきゃ
いけない仕事が
たくさん出るかも
しれないわ」
そう吐き捨てて
マユコさんは
またカートを
蹴飛ばすようにして
バス停にむかって
歩き出した。
「…どういうコト?」
『彼』と仕事をするって…。
ワケのわからない展開に
ジュンニイの顔を
まともに見れない。
「…また今度ちゃんと話すよ」
私のアタマを
持っていたパスポートで
ジュンニイがポンと叩いた。
「今度って…」
今夜とか明日とか
じゃないの?
ココロの中が
また不安で
埋め尽くされていく。
「そんな顔しないの」
ジュンニイは
私の首筋に手を添えて
唇にキスをした。
え?
「ひえええええ〜〜〜〜」
奇声をあげたのは
ジュンジュンだった。