「何て情けない声
出してるんだよ」

ジュンニイが
ちょっとだけ
笑ったように見えた。


ばさッ。

私の涙を
見ていないフリをして

ジュンニイは私に
コートのフードを
かぶせて


「この時間のATMって
いつも混んでるのな」

私の背中を押して
歩き出した。


いつもみたいに
手を繋いでは
くれないんだね。



歩道橋の傍にある
ATMには
長蛇の列が出来ていて

ジュンニイは
順番待ちしながら
ずっと私のコト
見てたのだろうか。



私を連れて
ジュンニイはマンションの
セキュリティーを解除する。


マフラーと帽子で
その表情がわからない。

ジュンニイは
何を考えているのか。


中に入るのが躊躇われた。


「…別に変なコトしないよ」


私の気持ちを
見透かしたような
マジな声のトーンに

不安がさらにおおきくなる。


マンションの
エレベーターの中で
ふたりきり。

ジュンニイは黙ったままで。


エレベーターの端と端。

こんなに離れて乗ったのは
初めてだった。


ジュンニイに促されて
部屋に入る。


「グリーン、弱ってるね」


私はベランダに出て

観葉植物の黄色くなった葉に
ハサミを入れ始めた。


その様子をジュンニイは
リビングから黙って見ていて

視線が痛い。

話もせずに
何を始めるんだと
呆れられているのかも
しれなかったけど

それでも

ジュンニイと面とむかって
黙り込んでいるよりは
マシだと思った。


ジュンニイと対峙するには
あまりにも
準備不足の私だった。