ジュンニイは
私から歯ブラシを
取りあげて
「指の間に土が
入っちゃったのなら
歯ブラシより
いいのあるから」
爪用のブラシを
出してくれた。
ほおおおおおおお。
私は思いっきり
胸を撫でおろす。
私にもまだツキが
残っているのかもしれない。
「一昨日、貰ったばっかでさ。
今、フランスの雑貨屋の
プロデュースをしてね。
いろいろ
送ってきてくれるんだ」
へえ…。
何の毛だろう。
固いんだけど痛くない。
「ま、ほとんど
事務所のヤツが勝手に
もって帰っちゃったけどね」
ジュンニイが
私の手を泡立て始めた。
「貸してみ」
爪ブラシを私から受け取って
器用にキレイに
指の中の土を取り除いていく。
「ヒメは妙なトコ
不器用だからなあ」
ジュンニイが
笑ってみせた。
久々に見た
ジュンニイのやさしい笑顔に
ちょっと緊張がほぐれる。
でも
何だろう。
この違和感は。
もしかして
もう別れを決心して
それで笑顔なんかを見せる
余裕が出来たとか。
私なんかもう彼女でも
ましてや婚約者でもなく
ただのガールフレンドの
ひとりとして
区分されちゃって
しまったのだろうか。
「来るモノ拒まずで…」
ジュンジュンのコトバが
圧しかかる。
今や私も
その中のひとりなの?
確かめるのが恐かった。
沈黙の中
私はひとり落ちていく。