「何か言うコトはないの?」
先に口火を切ったのは
ジュンニイだった。
「…ごめんなさい」
「そうじゃなくて。
頼むから
何か言い訳してくれよ」
「うん」
「うん、じゃなくて!」
「……」
何をどういう風に
言えばいいかなんて
いい知恵が
突然浮かぶワケもなく。
「何しに来たの?」
「わかんない」
「わかんないじゃ
ないだろ?」
会話になってなかった。
ジュンニイが私の指を
乱暴に扱う。
「相変わらず太い指だな」
思わず
お湯の中でジュンニイに
拘束されていた手を
勢いよく引き抜いてしまった。
「俺をびしょ濡れに
する気か!?」
タオルで濡れた顔を
拭いている。
息を止めて
ジュンニイの様子を
窺っている自分に気づく。
「ほら、ヒメも。
洗ったらすぐ拭かないと
肌が乾燥するぞ」
ジュンニイが
私の手をタオルで包んで
ほんのちょっとだけど
笑ったように見えた。
「ほら、コーヒー
冷めちまうぞ」
ジュンニイに促されるまま
リビングのソファーに座る。
ジュンニイは食器棚に
もたれかかるようにして
立ったまま
コーヒーを飲みながら
こっちを見てる。
微妙な距離感。
いつもなら
当たり前のように
隣りに座ってくるのに。
今までとは
やっぱりどこか違っていた。
何の準備もせず
流されるまま
ここに来たりして
私は本当に
考えなしだった。