「学生時代なんか

アニキってば
ひっきりなしにオンナ
取り替えてたっていうか。

来るモノ拒まずっていうか。

自分から好きになる
必要もなかったし」


「ま、モテるのは当然だ。
いいオトコだもんな」

お父さんが胸を張った。


「あはははは」

全く何か
こっちが赤面してしまう。

相変わらず
ユニークな親子だ。


「家の前でオンナノコ達が
取っ組み合いの
ケンカしてたり」

「スゴイな、それ」


「なのにアニキってば
家の中でマンガ読んでて
我関せずよ」

「ヒドイな、それ」


…いちいち何か
親子漫才のようだ。



「学生時代は
ちょっと有名な
女社長の母親のせいで。

今は自分が業界人で。

好奇心いっぱいのオンナが
たっくさん
近寄ってきてた」


「…アイツも
苦労してたんだよなあ」


お父さんが涙ぐむ。


お父さん…。

「ナチュラルに接していたのは
ヒメくらいのモノよ」

「そっかなあ」


あんまり興味がなかった

っていうのが
正しいような気がする。


あの頃は
アタマの中のほとんどを

『彼』が占めていたから…。


ちょっと胸が痛い。


「反応がまっすぐで、
安心出来たんだろうね」

お父さんがこっちを見て
微笑んでいる。


…買いかぶりだ。


お父さんは
何も知らないから
そんな上手が言えるんだ。


自分の息子が私に
どんなに酷いコトをされたのか
知らないから。

「……」

どんどん落ち込んでいくのが
自分でもわかった。

「オヤジ、そろそろ
自分の部屋行ったら?


寝る時間
なくなっちゃうよ!」


私の顔色を察してか
ジュンジュンが
お父さんを追い払う。