「ごめんね。
うっとおしいオヤジでさ」

「ううん」


ふたりでチャーハンを
再び食べ始めた。

お皿とスプーンの
音だけが響いていて

ちょっと息苦しかった。



「コーヒー淹れるね」

ジュンジュンが
いっぱい
気をつかってくれている。


もしジュンジュンと
私の立場が
入れ違っていたら

私はここまで
親友の為に
尽くせただろうか。

「いい香り」

「オヤジに仕込んで
貰ったから

コーヒー淹れるのだけは
自信あるんだ」


仲のいい家族
なんだよね。


ジュンニイの
コーヒーの腕も

お父さんの仕込み
なのかな。


ジュンジュンが
コーヒーを持って

当たり前のように
私の隣りに座った。


…兄妹って
どこか似てる。

「アニキってさ。

ここに
おおきな傷痕があるの
知ってる?」


肩から脇にかけて
ジュンジュンが
直線を描いてみせた。


「知らない…けど」

突然ジュンジュンが
切り出してきた
ディープな話題に

戸惑ってしまう。


「私もね〜
1回しか見たコトないんだ」


偶然、お風呂上りの
ジュンニイと
鉢合わせしたときに
知ったらしい。

ジュンニイもお母さんも
この傷の話題を
避け続けていて


「アニキってさ
絶対いつも中にTシャツ
インしてるでしょ」

「傷痕を
気にしてるってコト?」


「誰も何も
教えてくれないけど

たぶんあの傷をつけたのは
私の本当の父さんなんだ」


え…。