暴力が原因で
離婚したという
ジュンジュンの
本当のお父さん。
『彼』の母親の
ドメスティック
バイオレンスが
アタマをよぎる。
「ジュンニイはね。
今までだって
どんな辛いコトでも
許してきたよ」
お母さんのお葬式に
ジュンジュンの
実のお父さんが
焼香に来たときも
「アニキ
オトナの対応してたもん」
笑顔でお酌なんかして
気を配っていたと言う。
「ジュンニイは
過去にいつまでも
こだわる人間じゃないよ」
あの通り楽天的で
性格的にもあんまり長く
怒ってられないみたいだと
ジュンジュンは言う。
「…そっか」
ジュンジュンが
私を励ます為に
持ち出してくれた話
だったけど。
でも。
悪いけど。
それは仮面だ。
「妹には悪いけど」
そう言っていた
ジュンニイは
暴力を振るうオトコにも
ジュンジュンの父親にも
決して理解が
あるとは思えなかった。
「ただね。ヒメは
アニキにとって特別だから」
自分でも感情を
上手くコントロール
できないでいる、と。
「アタマでは
わかっているんだろうけどね」
ジュンジュンが
ジュンニイを解析する。
「…うん」
そうだね。
仮面すら
かぶれないくらい
傷ついているってコト
なんだろうね。
それくらい罪深いって
コトなんだよね。
「コーヒーお代わり
淹れようか?」
「ん…」
真っ暗な未来。
掌から全てが
こぼれ落ちていくのを
実感した。