コンビニに並ぶ雑誌達も

『彼』の人生を
面白おかしく書き立てていて。


義理の父が語る
息子と母のその愛憎の日々。


放映後

あのヒモという
キャラクターが登場して

ますます過激に
スキャンダラスに
脚色されているようだった。

おかげでこっちは
目立たなくて済んだけど。


でも

『彼』の母親は
こんな風に書き立てられたら

もう『彼』に顔むけ
できなくなってるんじゃ
ないのかな。


『彼』は今
どうしているんだろうか。


オークションの結果の話以来

ジュンジュンは
『彼』の制作活動について
何も話さなくなっていた。


大口たたいていたけれど
やっぱりショック
だったのかな。


「……」

私どうして
『彼』のコトなんか
心配してるんだろう。


「もう全てのヒメゴトから
お前を解放させたい」


心配すべきは
自分のコトで

『彼』のコトでは
ないのに…。


週刊誌を裏向けて
棚に戻そうとして

プォワーン。

大きなエンジン音に
ふと顔を上げる。


コンビニの前に
バスが止まっていて。


なにげなく行き先を見ると

ジュンニイのマンションの
近くを通っている
路線バスだった。


このバスに乗ったら
ジュンニイのマンションまで
20分前後。


電車に乗っても
乗り換えなしの5駅で

アクセスの良さに
感心させられる。

大学前。
バスの始発の停留所。

「……」

コンビニを出て

バスの中を
覗き込んでみる。


嫌な車の臭いがしない。

これなら車酔いとか
しないかも。


「早く乗りなさいよ!」
「え!?」

後ろに立っていた
ご婦人に押し込まれて

そのままバスに
乗るハメになってしまった。