意外と揺れない。

窓から見える並木道も
いいカンジだ。


このバスに乗って
毎日キャンパスに通えたら
楽しいだろうな。


遠くに見慣れた景色が
見えてきて。

心臓が高鳴るのが
わかった。


…降りるくらい

いいよね。


ジュンニイの
マンション近くの
バス停で降車する。


戸惑う気持ちとは裏腹に

マンションへと
自然に足は
むかっていた。


マンションの
ベランダの様子を

歩道橋から窺ってみる。


カーテンが閉まったまま。

ジュンニイは
まだ事務所なのかな。


ベランダに置いてある
グリーンが
黄色になっている。

水、やって
くれてないのかな。


寒い日はちゃんと室内に
入れなきゃって

口うるさく言ってたのは
ジュンニイの方だったのに。


まだ、そこまで
余裕がないのかな。


「はああああ」

話なんかまだまだ
聞いて貰えそうになかった。


ううん。

それとも
もう結果はとうに出ていて

ジュンニイの中では
すでにもう終わったモノで

忘れたい過去として
葬られているのかも。


そう思うと

泣けてきて


足元を流れる車達に
吸い寄せられそうな
錯覚に陥った。


自分なんて
誰の役にも立たなくて


ヒトを
不愉快にさせるだけで

大切なヒトひとり
大事にできなくて。


私なんか

私なんか…!


「な〜に、やってんだよ」


それは聞きなれた
耳触りのいい

私の大好きな声だった。


「ジュンニイ…!」