「ジュンジュンの
本当のお父さんがつけた
傷なんだって言ってたけど」
「……」
ジュンニイの形相が
みるみる変わっていくのが
わかった。
「…アイツ
そんなコト言ってたの?」
おしゃべりだっただろうか。
ジュンジュンには特段
口止めされては
いなかったけれど
触れてはいけない話
だったのかも…。
でも
後悔しても
もう遅かった。
「この傷はさ。
妹が手に持っていたナイフが
突き刺さった痕なんだよ」
私は聞いてはいけないコトを
聞いてしまって
いた。
ジュンニイの傷。
ジュンジュンが1歳のとき
中学校から
ジュンニイが帰宅すると
ジュンジュンの実の父親は
酔っ払っていて
「赤ん坊だった妹に
果物ナイフを持たせて
遊ばせていたんだ」
ナイフを妹から取り上げて
黙って片付けようとしたら
後ろから蹴り飛ばされて
「思わず逆上
しちゃったんだよな」
ジュンニイは
淡々と話しているけど
その異常な
シチュエーションに
私は眉をひそめずには
いられなかった。
ジュンジュンは
暴力が原因で離婚したと
言ってたけど
そんな次元の話ではない。
「そのまま父親と
取っ組み合いになって。
妹の傍にナイフが
転がっていってたコトに
気づきもしないで…
俺は…!」
そこまで話して
ジュンニイは
黙り込んでしまう。
「…ごめん」
え?
「やっぱり
今話したの忘れて」
ジュンニイは腰をあげる。
「ヒメにそんな顔されちゃ
たまんなくなるよ」