「ヒメ…」

ジュンニイの手が
私のアタマに触れ

そのまま
私のカラダを
抱きこむようにして


耳元にキスをしては

何度も何度も
よしよし、される。


…子ども扱い
されてると思った。


スゴイ悔しかった。


ジュンニイが
私の首筋に顔を埋める。


「…もう母親も義父も
死んじゃってて

俺しか知らない話なんだよ」


ジュンニイの腕が
力なく私の手を探ってきた。


「アイツが
この傷をそんな風に解釈
していたなんて」


ショックで
つい本当のコトを口に出して
しまったのだと

ジュンニイはそう後悔する。


「ヒメのせいじゃないんだ。

話してる途中で我に返って
冷静になっただけで…」


私の手を掴むその手は
どこか頼りなさげで。


「妹が持っていたナイフの上に
義父に殴られた俺が
倒れこんでしまった。

ただそれだけの単純な話で」


他人が聞けば
それくらいのコトって
言われるかもしれないって

自嘲してみせた。


ジュンニイは
私の胸の上で
その傷痕を指で示して

「…でも。

俺の血で赤ん坊だった妹が
真っ赤に染まった瞬間を

今でも忘れられないんだ…」

そう声をつまらせる。


思い出したくない記憶。
思い出させたくない事実。


「妹の前では
カンペキに振舞ってきた
つもりだったのに。

何で妹のヤツは…!」


ジュンニイが震えてる。


お母さんのお葬式のとき

ジュンジュンの
本当のお父さんに

ジュンニイは機嫌よく
お酌をしていたと
ジュンジュンも言っていた。


自分を偽って
自我を抑えて

そうやって
ひとりで守り抜いてきた
秘密だった。