「…不可抗力で
できた傷だもん。

それが原因で誰かが傷つく
必要なんてないと思う」


「……」

私のセリフに
ジュンニイの腕の力が緩む。

うつむいて
顔をそむけている
その孤独な頬を掴まえて

私はジュンニイの
次のセリフを待った。


でも
ジュンニイは
黙ったままで…。


まったく


こんなとき
カッコいいセリフひとつ
浮かばない。

もっといろんな本を
読んでおくんだったって

猛烈に後悔する。


どうしよう。

どうしたら
いいんだろう。

また私は地雷を踏んで
ジュンニイを
傷つけてしまっている
のではないのか。


「……」

私はゆっくり振りむいて

ジュンニイの様子を
確かめようとした。


「…ヒメ」

頬に添えた私の手に
ジュンニイは
顔を埋めてきて

私にその表情を
見せるのを阻む。


「…そもそも、私
記憶力悪いから

話したコトを
後悔する必要なんてないよ」


そうその場を取り繕って

ジュンニイのアタマを
ぽんぽんと軽く叩いた。


「……」

自分で言ってて
情けないけど

それでも


「うん。そうだな」

ジュンニイが
私の頬をひっぱり返してきて
くれたから

思わず涙が溢れてきて。


「変な顔」

ジュンニイが笑って
私の顔をおもちゃにして
面白がった。