それを合図にするように

若いスタッフも
海老フライや肉団子を
ガンガン食べだして。


「いい味だ」
「これ、もうないの〜?」

何か嬉しくなってしまう。


「ヒメ、もっとどんどん
出してあげて」


そんな無茶な。

「魔法使いじゃあるまいし」


ジュンニイが
傍にあったホウキを
私に差し出して


「魔法使えるくせに!」と
ふざけてきた。


ホウキを渡され
アタフタする私の姿に
スタッフが爆笑して

場がイッキに和む。


「こんなひょうきんな面も
あったんですね」

若い男性スタッフが
ジュンニイに
声をかけてきた。

「いや。何か印象違うなって。

ほら、いつも
カリカリしてるから」


言いにくそうに苦笑する。


「あんま寝てないんだろ」


監督さんが
ジュンニイを気遣った。


「…すみません。俺。
アーティスティックになると
人格変わるから」


ジュンニイは恐縮しきりで。


「なあにが
アーティスティックだ。

こ〜ゆ〜仕事は
クリエイティブさが
一番必要なんじゃ
ないんですか?」


若いスタッフのひと言に
現場が静まり返った。


気まずい空気…。


「あの、アニキは…!」

ジュンジュンがその場を
必死で取り繕おうとする。


でも
ますます空気は
悪くなる一方で。


「…いい素材は
生で食べて欲しいと
誰もが考える」


監督さんがプチトマトを
頬張りながら静かに
口を開いた。


「その通りですよ!
邪道すぎるんですよ!

これじゃあなたの個展に
『彼』の絵を使ってるようだ」


…もっともだった。