「アンタ達も来てたの?」

ジュンジュンのヘルメットを
バンバン叩いて

「アンタのアニキには
ホント手を焼くわ〜」

カカカと笑った。


そしてやっぱり
私のヘルメットも
ぐりぐりして

「心配しなくても大丈夫よ。

現場にはヒメちゃんが
心配するような
かわいいオンナノコは
いないから」


…また
誤解されている。


「打ち合わせですか?」


マユコさん曰く

スケジュールの調整が
分刻みになっている日も
ある程で

「ダブルブッキングに
遅刻に

気をつけなきゃって
もう毎日
寿命が縮む思いよ」


どうしても
キャンセルも延期も
出来なかった仕事が
いくつかあったのだという。


「なのにまたこんなトコロで
真っ黒になって」

おおきく溜息をついた。


「指示だけ
出してればいいのに。

現場に口やら手を
出し始めたら

収拾が
つかなくなるだけなのに」


マユコさんは心配する。

「ママ〜!」

子どもの声に
思わず振り返った。


園児を連れたオトコのヒト。

ひと目で親子だって
わかるくらいそっくりで。


「おお、トムノスケ〜」

マユコさんが
その園児を抱き上げた。


「トムちゃん。
オンナノコだからね」

ジュンジュンが
私に耳打ちしてきた。


「これ、家に忘れてった
ケータイ」

「助かったわ」


マユコさんのダンナさま。

美大時代からの
ジュンニイの親友…。