メガネ越しの瞳が優しい
色白で華奢なダンナさま。
「もう電波弱い!!」
わざわざ忘れ物を
届けてくれた親子を
放置したまま
マユコさんは
ひとりで外に出ていく。
「あ、ジュンだ〜!!」
メガネの園児は
ジュンニイの姿を見つけて
かけ寄っていった。
「トムノスケじゃん」
ジュンニイに
なれなれしく
抱きつく園児に
嫉妬を覚える…。
「相変わらずみたいだね〜」
「ペイ〜、いいトコロに!」
ジュンニイの顔が
さらに華やいだ。
「削り出し、やってくれ!
おまえの技術が必要だ」
「このコ保育園に送って
その後、会議で出勤なんだよ」
「見捨てるのか〜」
「俺のマユコさんが
残業してくれてるだけでも
ありがたく思え!」
わが家のサポートに
感謝しろと
ペイさんはさわやかに笑う。
「…悪りィ」
ジュンニイの顔が
マジになった。
「いや、残業代
はずんでやってくれれば
いいから♪」
紺のダッフルコートが
こんなに似合う
オトナのオトコのヒトも
めずらしい。
何て観察してたら
「君、ヒメちゃんでしょ?」
声をかけられた。
「マユコさんから
聞いてた通りの
かわいいコだったんで
すぐにわかったよ」
細い目がさらに細くなる。
ジュンニイの関係者で
まともなヒトに
初めて会ったような
気がする。
高校で美術の臨時講師を
しているという
ペイさんは
女子高生の扱いには
すごく慣れているようで
「もう進路は決まったの?」
話も弾む。