「クロ・サン・デニ。
届いてるよ。

気を使わせて悪いなあ」


家に着くと
パパ自らが玄関に出てきて
ジュンニイを出迎えた。


「パリゾのゼロヨン。
偶然見つけて。
注目の作り手ですよね」


「ホントにいいのかね。
こんなマニア垂涎の」

「酒強くないんで」

私なんか
眼中にないってカンジで

パパは
ジュンニイとばっかり
話し込んでいて。


アンリがどうの
デュバンはどうだとか。

パンパッゾにジテルダン。


知らない名前が
いっぱい出てきて

ふたりのワイン談義は
止まらない。


飲めないくせに
ワイン通のパパと
ここまで対等に
話してるんだから

一夜漬けの知識だとしても
スゴすぎだった。


「ジュンイチくんの
セレクトは
実にエレガントだ」

パパはジュンニイに対して
気持ち悪いくらい友好的で

ちょっと驚いた。


「お父さんの影響ですよ」

ジュンニイもさりげなく
パパのコトお父さんって
呼んじゃってるし。

パパもそう呼ばれて
悪い気はしてないらしい。


初めてジュンニイを
この家につれてきたときの
パパの仏頂面からは
想像出来ない。

ママとお土産のケーキを
取り分けながら
ココロの中で苦笑した。


パパの大好きな
ピノ・ノワール種の
ワインに合うチーズで
できたチーズケーキ。

酒好きの元に
持っていく土産も
全て計算済みで。


甘いモノに目がないママも

私が選んだミルフィーユを
嬉々として
頬張っている。


「どうしたの、虫歯?」