「ジュンニイは
そんな『彼』の想いを
目の当たりにして

心配にはならないのかな」


ふと漏れた私の本音に

ジュンジュンが
私の顔を不思議そうに
みつめている。


「ジュンニイは
ヒメに対してまっすぐに
素直に自分を出して
アピールしてるじゃん」


ライバルからの果たし状。

オトナのオトコとして
受けないワケには
いかない、と。


そうなのかな。
そんなモノなのかな。

ジュンニイを見ている限り
そんな風には
とても思えない。

私に愛されているという
自信に溢れていて。


誰かに
さらわれるかも
なんて思いは

微塵も感じなかった。


果たし状を
受けておいて

結果を待たずに
こんなタイミングで
結婚を
決めてしまうコト自体

矛盾しているように
思える。


俺を選ぶんだろうという
余裕というよりも

俺を選ぶしかないんだって

そんな感じだった。


でも、もう

「動きだしちゃったんだよね」


心配しても
しかたのないコトで。

どうにもならないコトなのに。


はたはたと
私の視界を侵食する
その広告に

私は不安をかき立てられる。


【産卵】という文字に

どんな意味が
あるというのか。

ジュンニイの真意も
『彼』の考えも
見えないまま…。


ジュンニイ達が抱えていた
深い苦悩と
現実の苛虐さを

私達は

まだ知らずにいた。