ピュア
日の暮れた美術館。
以前
併設されてる博物館に
来たときとは
全く様子が違っていて
警備員さんの数からして
ちょっとした
コンサート並みで
驚いた。
今回の個展は
中身がベールに
包まれてるコトもあって
「中に忍び込こもうとする
ヤカラが多くって
まいってますよ」
美術館の学芸員さんが
ボヤいてる。
「私ら美術制作スタッフだって
肝心の作品が設置されたトコは
見せて貰えなかったもんなあ」
監督さんが
ちょっと愚痴ってる。
「…開催前に
中途半端な形で外に
流出させたくなかったもんで」
ジュンニイが
申し訳なさそうにした。
カバンやケータイを預けて
身元を確認させられる。
「酔っ払いのマユコさん
置いてきて正解だったね〜」
ジュンジュンがおどけてる。
ジュンジュンがこういう風に
無駄に明るいときって
必ず胸の中に
不安を押し込めてる。
この親友のココロの動きが
手に取るように
わかるようになってきている
自分が
ちょっとツラかった。
「あら、アンタ」
警備員さんのひとりに
声を掛けられる。
「秘宝展で展示物
倒しかけたコだよね?」
「あ!!」
クリスマスイブの日に
お説教された警備員さんだ!
こんな日に
こんな風に
再会するなんて。
「あの楽しい彼氏とは
その後上手くいってるの?」
警備員さんが
警備室の小窓から
身を乗り出してくる。
「その節は…」
ジュンニイが
会話に割り込んできた。
「あれ? アンタ」
毎日のように通ってたのに
ジュンニイのコトを
同一人物だって
気づかなかったらしい。
「ほら。
いつも帽子かぶってて
くら〜いカンジで
来館してたから」
「…そんなに
暗かったですか、俺…」
愛想の良さが売りの
ジュンニイが
ここでは本当に
別人だったようだ。