それだけ
追い込まれてたってコト
なんだよね。


なのに

そこまでして
頑張った結果を

ここまで来ても
まだ拒絶したいと
思っている私は


最低だよね。


「彫刻。
今度は倒すんじゃないよ〜」

警備員さんに
笑って見送られる。


「もっとも
あまりの荘厳さに
近寄れないとは思うけどね」

学芸員さんと警備員さん達が
意味ありげに
頷き合っていた。


「そんなに凄いんですか!」

ジュンジュンの目が
おおきくなって

その表情がやさしくなる。


そして

恋をする乙女らしく

ハニかんだ。


…たまらない。


『彼』の作品を見て
私はこの親友の前で
どんなリアクションを
すればいいんだろう。


笑っても
泣いても
怒っても
困っても

彼女を傷つけて
しまいそうで…。

ましてや計算で
リアクションしようものなら

このピュアな瞳にすぐに
見破られてしまうだろう。


「正面玄関に回るぞ」

ジュンニイが
私の手を引いて歩き出す。


クリスマスイブの日も
この廊下を
ジュンニイと歩いた。


ふたりで交わした
ファーストキスの場所。


…ジュンニイは
覚えてないのかな。