スタッフがどんどん
私達を抜かしていって

廊下を先に歩いていく。


うつむく私の頬を
ジュンニイの手が
触れてきて


あの日のように

さりげなく
ジュンニイの唇が
重なってきた。


ジュンニイが覚えていたのか

たまたまだったのか


それは
わからなかったけど。


「行こう」


ジュンニイの手に力が入った。


ドアを開けて中に入ると
そこは真っ暗な世界で。


ピンスポットがひとつ。

『彼』のプロフィールが
目に飛び込んできた。

照明を頼りにその字を読む。


高校が9月付けで
退学となっていて

なじみのあるハズの校名が
どこか
他所の世界のように感じる。


家族のコトに
一切触れてないのは
マスコミを
意識してのコトなのか。


「…『彼』のお母さんが
見たら傷つきそうだ」

本音が漏れる。


「『彼』がどうしても
入れたくないって言うんでね」

ジュンニイが
私の背中を押して

先を勧めた。


ちいさな円形の廊下を
くぐり抜けると

そこは
キラキラの世界で。


足元を埋め尽くす
無数の八角形の
ちいさな鏡達。


まるで洞窟の中の
宝石のようで。


おおきく切りだされた
岩石の中から

その作品達は
顔を出していた。