ちいさなスポットライトが
ひとつひとつの
絵についていて

周りの暗さも手伝って
より集中力を煽っていく。


回覧者に手を抜いて
観るコトを許さない。


「うお、すげ〜!」

いっしょに
回覧していたスタッフが
甲高い声をあげた。


スタッフのカラダに
『彼』の作品が
映し出されてる。


「人間スクリーンだね。
こりゃ」

天井のライトが
幻燈のように『彼』の絵を
浮かびあがらせていた。


『彼』の絵は
私が想像していたのとは
全く違っていて。


坊主頭の正面のアップ
だったり。


カラダがアルファベットに
なっていたり。


顔色が虹色だったり。


口が糸で縫われていたり。


あのリアルな
彫刻からはあまりにも
かけ離れたモノだった。


モデルが
私だと言われれば
私なのかと思えるけど。

このモデルが他の誰かだと
言われれば

そうだと納得して
しまいそうだ。


でも

くるくるの毛の
わんちゃんが

少女に絡んでいたり。


ゴキブリの雲の中に
少女が眠っていたり。


蛙王子と親指姫を
揶揄するような表現に。


雨の中の湖畔に沈む
トカゲと少女。


ハチャメチャで
奇想天外に見えて


そこにはしっかり

あの行方不明騒動の夜を
思い起こさせる


『彼』からの
暗号が記されていた。