なのにみんなが
それに触れないのは
そこに『彼』の
切ないまでのココロが
あったからで。
これは
『彼』の無垢なココロ。
何の防御もない
素っ裸な『彼』のココロ。
「…好奇の目に
そのままさらすワケには
いかないと思った」
第三者に土足で
踏み入られ
汚されるモノではない。
「ココを締めつけられた」
ジュンニイは自分の胸元を
掴んでみせる。
「『彼』はこの絵を
他の誰にでもなく
この俺に見せたかったんだよ」
ジュンニイに手を引かれて
暗い順路をさらに先に進む。
そして
「『彼』がヒメに
見て貰いたかったモノ」
ジュンニイのコトバに
思わず足がすくんだ。
「…こんな大がかりな
マネまでして」
「こうでもしなければ
ヒメは『彼』の作品を
まともに見ては
くれなかっただろ?」
「……」
『彼』の気持ちを知っても
私にはその想いに
応えるコトができないって
誰よりもジュンニイが
知っているハズだった。
なのに。
ジュンニイの考えが
読めない。
先に進めば進むほど
不安ばかりが
どんどん積っていった。
世界中で
高額で取引されてきた
お金持ち達の
コレクション群が
引き立て役のように
中心にある彫刻を
取り囲んでいる。
「うお…」
「すげ…」
「ライティング入れると
これはまた…」
「メインホールだよ」
ジュンニイに
背中を押されて
私はその世界に
足を踏み入れる。
まぶしい…!